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催し物

岩手大学人文社会科学部 宮沢賢治いわて学センター 第21回研究会(=旧・岩手大学宮澤賢治センター第126回定例研究会)(2023.7.25)

定例研究会

名 称: 岩手大学人文社会科学部 宮沢賢治いわて学センター 第21回研究会
(旧・岩手大学宮澤賢治センター第126回定例研究会)
日 時: 2023(令和5)年7月25日(火)17:00~18:10
形 式: オンライン形式(Zoom Meetings)
講 師: 大野 眞男 氏(岩手大学名誉教授・当センター連携研究員/日本語学)
演 題: 宮沢賢治「山男もの」童話の土俗的背景
司 会: 木村直弘(当センター副センター長)
参会者: 57名

【発表要旨】
「山男の四月」「祭の晩」「紫紺染めについて」などのいわゆる「山男もの」童話が、やはり山男の登場する柳田国男『遠野物語』などと関連づけて論じられることが少なくないが、直接的な典拠関係を求めていこうとする姿勢のものと、そうではないものとに諸研究は分けられる。本発表では、『遠野物語』のような東京という国の中央から発信され、今日まで広く読まれ続けてきた文献ではなく、宮沢賢治とほぼ同時代に、東北地方という同じ場所から紡ぎ出されたが、決して中央の読者が注目したとは言い切れない様々な地方的文献に着目して、賢治の「山男もの」との関係の在り方を考察した。賢治が生きた時代に、賢治が生きた東北の地にあって、どのような土俗的認識が「山男」に関して持たれていたのかを、地方的ともいえる視点を持った幾人かの歴史家たち、具体的には遠野の伊能嘉矩、仙台の藤原相之助、喜田貞吉、そして花巻の杉村松之助たちの残した言説群にあらためて光を当てた。
蝦夷征伐という古代の史実に端を発した様々な伝承が、北東北の文化の土俗的背景を形成していたことは間違いない事実であり、近代以降、その背景の中から伊能嘉矩、藤原相之助、喜田貞吉、杉村松之助たちの論考が醸し出されてきたといえる。そのように考えるとき、基本的にはそれらの文化的醸成物の一つとして柳田『遠野物語』も位置づけるべきであるし、宮沢賢治の「山男もの」に代表される縄文的要素を含んだ作品群もそこに包摂されるべきである。それらの間に何らかの典拠関係はあったのかもしれないが、それらは基本的に同じ土俗的土壌に根付き、様々な形で開花していった地域的な文化的精華という関係にあるものととらえる必要が先ずあると考える。

宮沢賢治いわて学センター第21回研究会チラシ.pdf