名 称: 岩手大学人文社会科学部 宮沢賢治いわて学センター 第13回研究会
(旧・岩手大学宮澤賢治センター第118回定例研究会)
日 時: 2022(令和4)年5月26日(木)17:00~18:00
会 場: オンライン(Zoom Meetings使用)
講 師: 山本 昭彦 氏(岩手大学名誉教授/表象文化論)
演 題: フランス
司 会: 木村直弘(当センター副センター長)
参会者: 49名
【発表要旨】
宮沢賢治の作品はフランスでは1980年代後半から90年代にかけて、10冊以上翻訳出版され、ペーパーバックにもなっていたので、かなり読まれていたと思われる。今回は中でもエレーヌ・モリタ氏訳の「楢ノ木大学士の野宿」を取り上げ、その翻訳ぶりを見ながら「石ッコ賢さん」らしい作品を読み味わった。
言うまでもなく科学(地学)用語が多用される作品であり、それらは忠実に訳されているが、それを越えて、語りの順序やリズム、テンポ、オノマトペなどがフランス語でどのように扱われているのかを中心に見た。日本語でユーモラスな場面はどのように表現されるのか、特に末尾の、雲母紙の貼られた天井を見上げながら、東京の宝石商の言いなりにはならなかった自分を笑うような、満足しているような場面、その独特のおかしみや、時制の表現などに注意して読んだ。
翻訳とは結局一人の読者の読み方であり、その意味で、翻訳を読む読者と翻訳者の間で、賢治作品の受け取り方を無言で語り合うような面白さがあった。詳細は、具体的な引用(賢治の文章、訳文、訳文を敢えて直訳的に日本語訳してみたもの、の三段階)を含め『賢治学+』第2集(2022年6月刊)に掲載している。