メニュー

催し物

岩手大学人文社会科学部 宮沢賢治いわて学センター 第8回研究会(=旧・岩手大学宮澤賢治センター第113回定例研究会)(2021.7.30)

定例研究会

名 称: 岩手大学人文社会科学部 宮沢賢治いわて学センター 第8回研究会
(旧・岩手大学宮澤賢治センター第113回定例研究会)
日 時: 2021(令和3)年7月30日(金)17:00~18:40
会 場: オンライン(Zoom Meetings使用)
講 師: 筒井 久美子 氏(立教大学総長室社会連携教育課)
演 題: 宮沢賢治と「共に行く者」たち──しくじりの軌跡をめぐって──
司 会: 木村直弘(当センター副センター長)
参会者: 55名

【発表要旨】
 宮沢賢治は生涯をかけて「あらゆるひとのいちばんの幸福」が実現する社会へと、この社会を変えようと奮闘した。しかし、その試みは困難を極め、決して諦めることがなかった賢治は「しくじり」を繰り返すことになる。他方、賢治は常に誰かと共に社会を変えようとしており、彼の試みには必ず「共に行く者」がかかわっている。今回の報告では、賢治の「共に行く者」たちに着目しながら、「しくじり」の軌跡をたどった。
 盛岡高等農林学校卒業後の賢治は、父・宮沢政次郎とは価値志向を巡って、共に社会を変えていこうと誓った友人・保阪嘉内とは誓いの実現方法を巡って葛藤していた。稗貫(花巻)農学校教師時代には、生徒たちと共に楽しく農学校を変えていったものの、童話『銀河鉄道の夜』第三次稿で獲得した「嘉内/みんな」と共に行くという思想を実現すべく、教師を辞め羅須地人協会活動を開始した。しかし、「みんな」としての農民たちと共に社会を変える試みであったこの活動では、賢治が思い描いていた「作品世界の農民たち」と「現実世界の農民たち」との相違に直面した。その後始めた東北砕石工場技師の仕事は、工場主・鈴木東蔵と共に社会を変える試みであったが、「嘉内/みんな」と共に行くという高い理想と現実とのギャップに悩み続けることになった。
 このように、「共に行く者」は賢治の人生を通して次々と現れ、賢治自身と葛藤したり、「共に行く者」同士で対立したりして、賢治を振り回し続けたことを明らかにした。

岩手大学人文社会科学部宮沢賢治いわて学センター第8回研究会チラシPDF