メニュー

催し物

岩手大学宮澤賢治センター 第94回 定例研究会(2017.5.19)

定例研究会

名 称: 岩手大学宮澤賢治センター 第94回 定例研究会
日 時: 2017(平成29)年5月19日(金)17:00~18:00
会 場: 岩手大学人文社会科学部1号館 2階 第1会議室
講 師: 山本 昭彦 氏 (岩手大学人文社会科学部教授・表象文化論)
演 題: 「きみにならびて野に立てば」をめぐって
司 会: 大野眞男(当センター代表)
参会者: 名

★例会終了後、18:00~19:00 同階第2会議室にて、希望者により情報交換会(ミニ茶話会)が開催されました。

【発表要旨】
 昭和19年、軍営の若い賢治ファンに宮澤清六が送った詩のことが郡司直衛さんによって『賢治学』第2輯に報告されていた。この詩「君にならびて野に立てば」の写真版は、清六が清書したものではなく、「雨ニモマケズ」手帳にあった賢治の自筆のメモを丁寧に整え、写真版に再構成したものであったことがわかった。
 手帳の原稿には×印のついた、賢治が削除を意図したと思える部分もあるが、原稿の誤記の削除や、復元、配列をていねいに行い、ギリシア彫刻の(女神の)美しい横顔を背景にして、この清冽な愛の詩を送り、戦時下の若者を激励しようとする、清六の非常にリベラルな、勇気ある行為だったと思われる。
 詩のモチーフは短歌の時から賢治が抱えていたもので、ザエ(流氷)の詩にも通じるものがあり、実体験だけというよりは、文学的に手を加えられている印象があるが、並んで、彼方(理想?)を共に見る、ということと、現実生活の葛藤(あるいは諦め?)も記されていて印象深い詩である。
 賢治の「恋」のモデル探しという意図ではなく、作品の生成、定着について、原稿や写真版の状態をスライドで映しだしながら考察をめぐらせた。『賢治学』第4輯(2017年7月刊行)にさらに詳しく論じている。

▼山本昭彦 氏による講演風景